増上寺の寮に憑いた花崎という狐
どんな伝承か
守興和尚が語ったところによれば、江戸芝の増上寺で、和尚が学んでいた寮の同輩の若僧に狐が憑き、その振る舞いが女のようになった。狐は寮主に向かって、自分は隣の庭の小祠に住んでいたが祠を壊されて住むところがない、庭に形ばかりの社を建ててほしいと頼む。素性を問うと、もとは洛西久世の者で、数百年前にこの地へ来た花崎という名だと答えた。額の字を書けと言われて手本を写すと、寮主よりはるかに巧みだった。社が成ると、朔と望に飯を供えるよう求めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。