摺鉢の蛙を呑んだ吹上御庭の蛇
どんな伝承か
江戸半蔵御門の内、吹上御庭の奥に月光院尊尼の御守殿があった。まだ栄えていた頃の夏のこと、庭で蛇が蛙を追いかけているのを見て、侍女たちに命じ、蛙を摺鉢の下に伏せて助けさせた。蛇は摺鉢の上に登ったり降りたり、身を巻きつけては解くことを二時間ほど繰り返し、ついに自ら身をよじり切って摺鉢の上で死んだ。もう安心だろうと摺鉢を取りのけてみると、いつのまにか別の蛇がいて、その蛙を呑み込んでいた。人々は恐ろしがって残らず逃げ去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。