天狗を祭る聖と内裏の祈禱くらべ
どんな伝承か
「今昔物語」に見える話として、円融院天皇がもののけに取りつかれて長く病み、名高い僧たちの加持も一向に効かなかった。東大寺の南の高い山にいる聖を召せば験があると勧める者があり、呼ばれた聖は道すがら空から花を降らせて上京し、加持によって天皇の病をたちまち癒やした。面目を失った広沢の寛朝僧正と余慶僧正が、聖の控える几帳に向けて力を合わせて祈ると、羽ばたきの音と悪臭のなかで聖が転がり出て、自分は長年高山の天狗を祭ってきた者だと泣いて許しを乞うた。天皇の命で追い払われたが、天狗を祭る者はいずれ正体を暴かれて身を滅ぼすといわれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。