薮川の山の神と春田打の醜女面
どんな伝承か
盛岡市の郊外、薮川村の入口に山の神の祠がある。春は神が里へ下って里の神となり、秋は田の神が山へ上って山の神となるというので、春の始めと秋の終りに祭りをする。ここにはたくさんの男根の形をしたものが供えてあるが、これはこの神がひどい醜女で、嫉妬ぶかい女神だからだという。同じ盛岡の正月のほがいびとに春田打というものがあり、端麗な美女の面をかぶった太夫が種おろしから穂運びまでの所作を能がかりに舞い、舞い納めの瞬間に面をさっと外して、真黒な大きな醜い面に早変わりして終る。この醜女の面こそ山の神本来の姿だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。