えびや爺様を化かした狐
どんな伝承か
麓山さまから東手の山ふところには、昔から代々人を化かすのが上手な狐の一家が棲んでいて、化かされた話はみなその系図の狐の仕業だったという。明治になって十年も過ぎた頃、臺下でえびをすくって商売にしている土屋家の隠居、えびやの爺様が、大きなすくい網をかついで菱沼川を「オー深ェ」と言いながら渡っているつもりでいた。ところが実際には自分の家の脇のそば畑を、袴を脱いで爪先立ちであちらこちらと歩き回っていたのである。家の者が見ている間に、獲ったえびはすっかり狐に食われて空になり、爺様は川を渡りきった風情で疲れ切って帰り、そのまま寝込んでしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説(猪苗代町(編)・猪苗代町史・自治体史(民俗))
福島県猪苗代町(会津)に伝わる口承を語り手付きで網羅する。昔話は猫と単・ほととぎす・かちかち山・猿蟹合戦などの動物昔話、五月節句の菖蒲とよもぎ・澄子と清子・朝鮮の桃太郎・話三両・亀ヶ城の女中の一つ目小僧・花咲爺さん・竹の子童子・猿むこ入り・笠地蔵・こぶ取り爺さん・姥捨て山・片目の爺さまなどの本格昔話を収める。