肥溜めの蓋の上の湯上がり
どんな伝承か
日露戦争のころ、壷下でも一、二という大百姓の親父が、走り出したばかりの岩越鉄道の汽車に乗り、翌日から始まる田植えの買い物に郡山へ出かけた。珍しい食べ物を大風呂敷いっぱいに買い込み、夕闇の迫るころ関都の停車場まで帰り着くと、息子が迎えに来ていて、婆さんが朝から具合を悪くしたという。急いで帰ると家には誰もおらず、息子に勧められるまま湯に入り、湯殿の板場で身体を拭いていた。ところが夜が明けて苗取りに出た近所の女たちに、我が家の日泥田の肥溜めの蓋の上で泥だらけの裸のまま立っているところを引き下ろされた。買い物は早乙女に配る手拭い一本を残して、みな狐に食われてしまっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説(猪苗代町(編)・猪苗代町史・自治体史(民俗))
福島県猪苗代町(会津)に伝わる口承を語り手付きで網羅する。昔話は猫と単・ほととぎす・かちかち山・猿蟹合戦などの動物昔話、五月節句の菖蒲とよもぎ・澄子と清子・朝鮮の桃太郎・話三両・亀ヶ城の女中の一つ目小僧・花咲爺さん・竹の子童子・猿むこ入り・笠地蔵・こぶ取り爺さん・姥捨て山・片目の爺さまなどの本格昔話を収める。