八幡太郎に通った貞任の姫
どんな伝承か
前九年後三年の合戦の折、源義家は鶴の羽形城に対陣した。城を守るのは安倍貞任である。毎日矢石を交わすうちに、義家は貞任の息女鹿姫と情を通じた。姫は夜になると笛を吹いて義家のもとへ通い、その通い路は笛沢と呼ばれるようになった。やがてこの事が貞任の耳に入り、即刻追手が差し向けられて姫は斬り捨てられた。姫が息を落とした場所を今も鹿沢といい、その流れには毒があって飲めば命がないと戒められている。姫の一念の致すところだという。また毎年五月四日の日暮れには姫神山の水が一時に白く濁り、翌五日には山の榎に白旗が幾十流も立つ。この白旗を見た者は三年のうちに死ぬと言い伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。