夜半の神使ひ
どんな伝承か
三峰山の奥の院への夜間参詣の儀式についての記述。普通の参拝者は疲労から手前で引き返すが、講中の信仰者たちは奥の院まで向かう。その道は狼の棲息地として知られる薄暗く危険な場所である。祭りの前夜、籤で選ばれた神官と剛力の二人が、精進潔斎して大きな供餅を背負い、松明を灯して真夜中に参詣する。狼への恐怖に駆られながらも、二人は心を一つにして奥の院に到達し、供餅を神前に供える。神官は祝詞を唱え、信仰者が狐狸などの悪霊に苦しむ際の助けとなるよう祈る。この供餅は砕いて粉にしたものが狐つきなどに驚くべき効果があるとされている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。