湯殿山道に湧かせた独鈷清水
どんな伝承か
今から千百十余年も前のこと、弘法大師は湯殿山を開くため梵字川をさかのぼり、田麦の里から険しい山道を喘ぎながら登っていった。中腹まで辿り着いたものの喉の渇きはどうにもならず、水も持ち合わせていなかったので、手にしていた独鈷を大地へ突き立てた。すると泉がこんこんと湧き出したという。大師はその水で行水をし、かたわらの杉の葉で手を拭おうとしたところ、その葉はよじれてしまったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。