草履から生えた湯峰の蒔かずの稲
どんな伝承か
東牟婁郡の湯峰温泉場より一丁ほどのところに、蒔かずの稲というところがある。昔、小栗判官が悪者に毒酒を飲まされて身は癩となり、薬も効かず歩行さえできなくなった。妻の照手の姫は夫の病を癒そうと車に乗せ、毎日自ら車を引いて所々方々をさまよった。ついに湯峰の温泉がよいと聞いて出発したが、湯峰への道はほとんど山ばかりなので、車を捨てて夫を負って行った。これが今に車塚として残る。温泉より一丁ほどの所まで来た時、妻は切れた草履を捨てた。その草履から稲が生え、毎年、種をまかないのに実るという。これが蒔かずの稲である。小栗判官はここで三年間入浴し、全快して帰ったという。
原典より
東牟婁郡湯峰温泉場より約一丁ほどのところに、蒔かずの稲というところがあります。—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。