乳をもらった子狐が鍛えた一刀
どんな伝承か
むかし布留の近くに修験者がおり、毎月松尾山へ参詣する途中、竜田社の神官の家に立ち寄っていた。神官の娘に恋慕されて困り、女を振り捨てて逃げたが追われ、八条町の菅田明神の裏の松に上って身を隠した。女は傍らの渕に身を投げて死に、その霊が大蛇と化して嫁入りの行列に雨を降らせ、花嫁を取って食べた。母狐がこの毒気にかかって死んだため子狐が空腹で困っていたところ、子を負った乳母が菅田神社に参詣して出会い、乳を与えて育てた。子狐は礼に刀鍛冶の弟子となって向槌を打ち、一刀を鍛えて乳母に授けた。乳母は村人の助勢でこの刀をもって大蛇を退治し、刀を三島のウバガ井手で洗って石上神宮に献上した。これが世にいう小狐丸であるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。