電気づくめの新式遊覧地となった温泉
どんな伝承か
樹を植えることは近代の一つの流行だが、それは個人の家のまわりか、学校や小公園のように一旦土を削って地肌を見せた処に、そんな土地にも育つものを植えるばかりで、広い平原の大きな風景の調和は誰の任務でもないから誰も考えない。花巻の温泉は万事電気づくめの新式遊覧地だが、山を眺めているといつも夕方のような気持ちがする。なぜこの山に百合の紅白、あるいは萱草のような赤い花でも取り合わせてみようと思わぬのかと言ってみた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。