沼の主への手紙と黄金の石臼
どんな伝承か
遠野の町で今は池の端という家の先代の主人が、宮古へ行った帰りに閉伊川の原台の淵のあたりを通ると、若い女がいて一封の手紙を託した。遠野の町の後ろにある物見山の中腹の沼へ行って手を叩けば、宛名の人が出て来るという。道々気に掛かっていると一人の六部に行き逢った。六部は手紙を読み、これを持ち行けば汝の身に大きな災いがあると言って別の手紙を与えた。これを持って沼で手を叩くと、果たして若い女が出て手紙を受け取り、礼にごく小さな石臼をくれた。米を一粒入れて回せば下から黄金が出た。しかし妻が慾深く一度に沢山の米をつかみ入れたので、石臼はしきりに自ら回り、ついに水溜りの中へ滑り入って見えなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。