早池峯の餅を食う大坊主
どんな伝承か
初めて早池峯に山路をつけたのは附馬牛村の何某という猟師で、時は遠野の南部家入部の後という。この猟師が半分ばかり道を開き、山の中腹に仮小屋を作っていた頃、ある日炉の上に餅を並べて焼きながら食べていると、小屋の外を通る者があってしきりに中を窺う。よく見れば大きな坊主であった。やがて小屋に入り来て、こらえかねて手を延ばし餅を取って食う。猟師も恐ろしいので自らも取って与えると、嬉しげになお食べた。次の日、餅によく似た白い石を二つ三つ餅にまじえて炉に載せておくと、坊主は今日も来て餅を食い、続けて白石を口に入れ、大いに驚いて小屋を飛び出し姿が見えなくなった。後に谷底でこの坊主が死んでいるのを見たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。