鶏頭山の天狗と大男三人
どんな伝承か
鶏頭山は早池峯の前面に立つ峻峯で、麓の里ではまた前薬師ともいう。天狗が住むといって、早池峯に登る者も決してこの山は掛けない。山口のハネトという家の主人は佐々木氏の祖父と竹馬の友で、極めて無法者であった。ある時、人と賭をして一人で前薬師に登った。帰っての物語に、頂上に大きな岩があり、その岩の上に大男が三人いた。前に数多くの金銀をひろげていた。近寄るのを見て気色ばんで振り返るその眼の光は極めて恐ろしい。早池峯に登って道に迷って来たのだと言うと、それならば送ってやろうと先に立ち、麓近くまで来て眼を塞げと言う。しばらくそこに立っている間に、たちまち異人は見えなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。