熊と組み合った猟師
どんな伝承か
上郷村の熊という男が、友人と共に雪の日に六角牛へ狩に行き、谷深く入ったところ熊の足跡を見出した。手分けしてその跡を追い、自分は峯の方を行くと、とある岩の陰から大きな熊がこちらを見た。矢頃があまりに近かったので、銃を捨てて熊に抱きつき、雪の上を転びながら谷へ下った。連れの男は救おうと思ったが力が及ばない。やがて谷川に落ち入り、人が熊の下になって水に沈んだので、その隙に連れの男が熊を打ち取った。男は水にも溺れず、爪の傷は数か所受けたが、命に障ることはなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。