荷を庫へ入れた顔の見えぬ女
どんな伝承か
本所二丁目の相生町と緑町との横町にあった梅原宗得の家には、火防の神として祭られる土蔵の妖怪がいた。ある年、近くで火事があり、この家も片付けが間に合わなかった時に、見馴れぬ女が一人出て来て荷物をまとめて庫へ入れてくれた。髪は長く垂れ、顔はどうしても見えなかった。やがてその女は庫の中に自分も入り、内から戸を閉じたという。古土蔵は石庫で中には変わったこともなかったが、ただ隅の棚の上に五六寸四方の箱が一つ、昔から置き処を換えず誰も手を着けずにあり、これが不思議の源であろうということであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。