良伝の草庵の床下に住む三尺の坊主
どんな伝承か
伊勢国桑名に良伝という遁世者がいて、小さな草庵に住んでいた。ある日遠方から帰ると、竈に薪がくべられ火が熾り、釜には米が炊けて飯になっていた。その後も留守のたびに飯や家具が取り散らかされるので床板を外すと深い穴があり、八十歳ほどに見える三尺ばかりの坊主が、にこにこ笑って座っていた。壮夫たちが松明で燻し殴り殺そうとしたが、老人が「北国で下屋入道という物で人に害はない」と止め、遠くへ追放した。六年後、坊主は別の山寺の古井戸から再び現れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。