女幽霊が掘った清水
どんな伝承か
江戸時代の元禄のころ、このあたりに住む前田某が、ある夜仕事を終えて家へ帰る途中のできごとである。女が子どもを抱いて出てきて、この子どもをちょっと預かってほしいといった。驚いた前田某がわけを聞くと、女は、大事な夫がやみうちにあって殺され、そのかたきをとろうとしているうちに難産で自分も死んでしまった、死んでも死にきれないので幽霊になってかたきをとりに来たのだという。前田某があっけにとられているうちに、幽霊は子どもを預けて消えた。しばらくして女幽霊は生首を抱いて戻り、何のお礼もできないがここに清水を掘ってお礼としたいといって清水を掘り、生首と子どもを抱いて消えたという。
原典より
場所 戸山ハイツ内 旧陸軍戸山学校城壁北側時代 江戸時代 元禄(一六八八 一七○三)のころこのあたりに住む前田某が、ある夜仕事を終え、家へ帰る途中のできごとであった。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年))
『新宿と伝説』は、新宿区教育委員会が昭和四十四年に編んだ区内の伝説集である。カッパが出る坂、四谷怪談のお岩、矢来町の化け石、女幽霊が掘った清水など、牛込・四谷・戸塚大久保・新宿・淀橋柏木落合の各地に伝わる六十二の伝説を、江戸の地誌や随筆などから採って収める。第一章で伝説の分布と型を概説し、第二章では地域別に、各話へ場所・時代・出典・解説・参考書を添える。