熊野詣の帰りに持ち帰って育った熊野石
どんな伝承か
太田にある熊野石は、昔、里の農夫が紀伊の熊野社から持ち帰った石だというが、当時は農夫の袂に入るほどの石にすぎなかったものが、今では高さ三尺四寸、周り三尺九寸ほどの巨大な石となった。そこで村人は霊石とし、今はこれを熊野権現として祀っている。「佐倉風土記」によれば、五百十年ほど前、村民が紀伊国の熊野社に詣で、帰ろうとしたとき桃の核ほどの青石が鞋に付き、怪しんで袋に入れて持ち帰ったところ、日ごとに長じて重くなり、家に着く頃には袋に収まらなくなった。神として熊野権現に祀ったがなお成長はやまず、初めは祠の中、後には外へ移したという。石は一年に米粒ほどずつ伸び、四十年前と比べ六、七寸伸びたと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。