白衣の医者を幽霊と見誤った青年
どんな伝承か
石垣島の宮良川に三人連れの女の幽霊が出ると噂されていたころ、四ヵ村の医者の牧志は、宮良村と白保村への往診で遅くなり、借りた馬で午前一時過ぎに宮良川を渡った。幽霊など信じない牧志は、橋を越えたところで急に眠くなり、月明かりの芝生に寝転んで眠り込んだ。歌声で目覚めて馬の手綱を解いていると、四ヵ村から酔って歌いながら帰ってきた白保村の青年が、白衣の牧志を噂の幽霊と思い込んで悲鳴をあげ、呼び止めても馬を駆って逃げ去った。牧志は、三人連れの幽霊もこの程度の見間違いだろうと話していたという。
原典より
馬に乗った白衣の牧志医者の姿が、天に届くような、大きな幽霊に見えたらしい。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。