奈落から現れる女形の霊
どんな伝承か
昭和三年秋、仙台の繁華街東一番丁と森徳横丁と呼ばれた通りの北東角に、森徳座という芝居小屋が栄えていた。看板書きの村上という若者は、深夜の花道で仕事をしていると舞台のあたりが急にほの明るくなり、廻り舞台の下の奈落から呻き声と青白い燐火が浮かび上がるのを見た。泊りの客呼び高橋庄七郎も、皿の割れるような音のあと、廻り舞台から白い霧が湧いて藤娘のような舞姿の娘になり近づくのを見て気が遠くなった。三日目の夜に宿直した遠藤某も大きな物音に驚かされた。座主の森政雄は、明治三十三年頃に旅役者の女形が奈落で首をくくって死んだことを明かし、内輪で供養して墓石を建てて弔うと、舞台の怪は絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(宮城県史シリーズ・昭和中期(推定1960-1970年代))
宮城の民間信仰と禁忌(宮城県史民俗編)/禁忌を破る祟りと火玉/河童・狐狸の怪/年中行事と俗信/地域の幽霊・妖怪伝承