三人の娘に憑いた山伏の死霊
どんな伝承か
仙台の本柳町に東巻師の一家が住み、器量のよい三人の娘があって家も豊かであった。姉娘は庭石に躓いて膝を痛め、足萎えとなって死に、続いて妹娘も同じように庭石で膝を強く打ち、十六歳の暮に死んだ。通夜の夜更け、うち笑むようであった死顔が赤黒い鬼の相に変わり、七代前の先祖に旅で金を奪われ殺された山伏の霊だと名乗って、納戸の箪笥の奥に自分の刀があると刀の造りや銘まで告げ、位官相応の行列でこの家から葬礼を出せと迫った。両親が形ばかりの葬式で済ませると霊は末娘に憑いて怒り、約束どおり営んだあとも末娘は憔悴して死に、夫婦は家を捨てて行方知れずになったという。
原典より
昔、仙台本柳町に某という東巻師の一家が住んでいた。—— 宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。