毎夜飴を買いに来る女と膏薬の川獺
どんな伝承か
昔、江戸本郷の切通し坂上にあった猿屋という飴屋へ、毎夜更けてからやつれ果てた年増女が飴を買いに来た。様子が怪しいので、ある夜小僧に跡をつけさせると、女はとある寺の墓地で姿を消した。調べてみると、嬰児を残して死んだ女が、その子が愛しさに毎夜幽霊となって飴を買いに現れていたのだと分かったという。また両国近くの薬種屋へは、毎夜子供が万金膏を買いに来た。跡をつけると河岸の石垣のわきで消え、翌日その穴を調べると、体じゅうに膏薬を貼りつけた川獺が死んでおり、そのわきで子らしい川獺が悲しそうに看護していたという。
原典より
愈よ出でゝ愈よ怪しき婦人の挙動は、もしや伝通院に年古く住むと聞く、白狐の仕業にはあらぬかと、これまで持ち来りし米を改めて見しも、別に砂利とも変らねば、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。