掘り出した屍体との情死
どんな伝承か
岩手県二戸郡斗米村の玉川たみは、日ごろ良人に虐待される辛さに堪えかねて実家へ帰り、七日に縊死を遂げて、同村の高宗寺に埋葬された。ところが、たみの幼友達で、当時青森県下北郡川内村に住んでいた月館孫兵衛という男が、十二日の夜九時ごろ高宗寺へ忍び込み、たみの死体を掘り出した。そして、その屍体を自分の身体に結びつけると、携えてきた村田銃で自らの咽喉を撃ち抜き、世にも奇抜な情死を遂げたのであった。幼いころから相愛だった女が人妻となり、その死を聞いて帰って来た男の、悲しい恋の終わりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。