風呂で殺された間男の幽霊
どんな伝承か
山形城下の七日町に滝屋という雑穀商があった。江戸の末の頃、主人は買付けで家を空けることが多く、品物が減るのを不審に思った。出かけるふりをして天井裏に隠れていると、女房が遊び人の政を引き入れ、風呂を沸かして二人で入った。女房が先に上がった隙に、滝屋は風呂桶に蓋をして重石を置き、釜を焚いて政を殺した。死骸を俵に詰めて出て行くと、その夜泥棒が俵を担ぎ出し、神社の境内で中身を知って賽銭箱に寄りかからせた。賽銭泥棒と思った神主が棒で殴り、死んだと驚いて死骸を政の家の井戸へ投げ込んだ。政は自殺と噂されたが、以来、女房が風呂に入るといつの間にか政の幽霊も一緒に入っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。