死ぬ前に住職を訪ねる魂
どんな伝承か
語り手の祖母の話である。その祖母は八十で亡くなり、それから三十幾年が経つというから、ずいぶん昔のことになる。寺の名は思い出せず、二俣尾だったか、沢井か軍畑のあたりだったか、そくせい寺という名だったかと、語り手は言葉を濁す。線路の下に門があり、線路の上に堂が建つ寺だったという。その寺では、人が亡くなる前になると、当の本人の姿が住職によく見えたのだそうだ。遊びに行くのだという。よほど偉い僧だったのだろう、と語り手は結んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。