枇杷葉湯売りの西本義直と仇討ち
どんな伝承か
御一新のころ、甲府の町はずれの真言宗の寺へ枇杷葉湯売りの若い男が来て、寺男に酒を振る舞い泊めてもらった。正体は上野の戦を前に彰義隊を抜けた旗本の長男西本義直で、以前世話になった甲府の山名家の後家と通じていた。寺男から和尚が小柄な後家と密通していると聞き、相手が自分の女だと悟った義直は、三日見張ったのち、逃げようとする女を夜道で斬った。明治十四年四月三日、隅田川べりの向島の西本邸を山名道太郎と名乗る書生が訪ね、昔の恨みを晴らすと義直を斬った。補遺では討たれたのは弟だったとも伝える。
原典より
枇杷葉湯賣は西本義直と云ふ彰義 の一人であった。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。