六甲の神の到来で退いた半蛇姫
どんな伝承か
大正九年十月十九日の午前九時ごろ、岡本信之の体に居座っていた半蛇姫が、突然岡本の口を通して、六甲からたいそう畏れ多い神がお出でになってこの体に憑ろうとしているので、残念ながら一旦万代池へ引き揚げると告げた。お筆先を聞かせてもらえなくなるのが悔しいから、誰かふさわしい人間を推薦してほしいと頼んだ。岡本が同僚を二、三人挙げると、霊統や改心の度合いがあるからと首を横に振り、竜神さまが帰られたらまた迎えに来てほしいと言い残して去った。岡本は十四日から六日目にようやく解放されたという。
原典より
六甲(六甲山の意)からいと畏き神さまがお出でになって、この肉体に憑ろうとしておられるから、私は残念ながら一旦万代池へ引揚げます。—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。