夜半に這い出す老婆のザシキワラシ
どんな伝承か
佐々木喜善『奥州のザシキワラシの話』には老婆のザシキワラシも記録されている。栗橋村字砂子畑に清水の六兵衛というかなり裕福な家がある。明治三十年頃の旧暦三月十六日の夜、大洞犬松という男が所用でこの村へ行き、この家に泊まった。他にも二、三人の泊まり客がいたが、犬松だけが表座敷と奥座敷の間に寝かされた。夜半と思われる頃、奥座敷の床の間の方で足音がして顔を上げると、坊主頭で丸顔の小さな老婆が這い出して自分の寝ている方へ来る。老婆は低い声でけたけたと笑い、隅の小暗い方へ引き返す。それを二、三度繰り返すので堪えかね、夜明け頃に常居へ逃げ出した。家人は昔からこの座敷にはザシキワラシがいるのだと笑ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。