山林の上に浮かぶ洋館の灯
どんな伝承か
数年前のこと、出雲国の来待村と宍道村との間の人家のない所で見たという知人の話がある。夜の十時頃、車に乗って走っていると、俄然、暗い山林の上に洋風建ての大きな二階造りの家屋の各室が、灯火で明るくなっている光景が見え出したので、車夫とともに驚きながら見て通り過ぎた。車夫も、この辺りにこのような家は決してないと言っていたという。著者は狐火に四種あるとし、これを大厦高楼の各室が灯火で明るくなる型の一例として掲げている。
原典より
又數年前、出雲國來待村と宍道村との間の人家の無い處で見た知人の話には、夜の十時頃、庫に て走つてゐると、俄然闇い山林の上に洋風建ての大きな二階造りの家屋の各室が、燈火で明るくなつて居る光景が見え出したので、…—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。