火柱の噂を言いふらした乳母
どんな伝承か
『庄内可成談』は、火事になる家には必ず火柱が立つという言い伝えを退けている。火事の前後は物騒で人の気も落ち着かず、いろいろなことが言いふらされるが、実は根拠のない話だという。ある年、代官町の芳賀氏の家が焼けたとき、その前に火柱が立ったという噂が広まった。言い出した者をたどるとその家の乳母で、問いただすと作り話だった。実は乳母自身が火をつけようとたくらみ、その前に火柱が立ったと言いふらしておいたのだと分かり、乳母はその罪で罰せられたという。
原典より
庄内可成談に云、火災あらんとする家には必ず火柱と云ふ物立つと云へり、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。