洗足寺の門前に浮いた白い影
どんな伝承か
井上円了が司馬江漢の『春波楼日記』から引いた一話。江漢が旅先に逗留していたある日、その土地の染屋の主人と連れ立って手習いの師匠を訪ね、夜になって帰ってきた。道筋に、たらい山洗足寺という珍しい名の寺がある。家康がここを通ったとき老婆が洗濯しているのを見て名付けたと伝わる寺だ。その門前あたりに、白い衣を着けたものが腰から下を地に着けぬまま揺れ動いている。世にいう幽霊だと思って恐ろしくなり、近くの酒屋を叩き起こして先に立ってもらうと、葬式で使った紙の幡が木の枝に引っかかったままだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了(平野威馬雄 編著)・井上円了・妖怪学・明治(原著)・現代(編))
哲学者・井上円了(妖怪博士)の畢生の大著『妖怪学講義』を、平野威馬雄が編んだ普及版。円了は真の宗教信仰の障害となる迷信を打破するため、あらゆる妖しきものの正体究明に一身を捧げ、妖怪を物怪・心怪・理怪に大別し、物怪心怪を仮怪(説明可能な迷信)、理怪のみを真怪とした。本書は理学・心理学・宗教学・雑の各部門から具体例を抄録する。序ではコックリ(狐狗狸)を西洋のテーブルターニング由来の無意識筋肉運動と解明。