馬方も人足も山伏の門前街手向
どんな伝承か
羽黒山の門前街である手向を訪れると、襦袢に股引、足半草履をはき、腰に山刀を下げ、草刈り鎌を携えた、いかめしい口髭の男たちを見かける。あとをつけてゆくと、唐破風造りの立派な玄関を持ち、「三山参詣人斎戒所」とか「○○県○○郡永代宿坊」といった看板を掲げた堂々たる構えの家へ入ってゆく。炭焼き人夫か農夫かとも見えたその男は、山伏だったのである。これは今に始まったことではない。幕府の巡見使に随行して羽黒に来た古川古松軒も、『東遊雑記』に「手向町よりは、馬卒人足皆山伏にて、総髪の者カゴなどをかく」と書いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。