本多家の門に入った狐の嫁入り
どんな伝承か
宝暦三年の秋八月の末、八丁堀にある本多家の屋敷で狐の嫁入りがあったと伝わる。誰が言い出すともなく、今夜この家で婚礼があるらしいという噂が近隣の屋敷に広まった。日暮れから道具を運び入れる人の行き来が絶えず、夜九つ前には数十の提灯がともり、鋲を打った女乗物を数十人が前後から守って、静かに門の中へ入っていった。隣家から眺めた者は、五、六千石の家の婚礼にも見える立派さだったという。本多家が誰と縁を結んだのかと不審がられたが、後で聞けば狐の嫁入りで、当の屋敷では誰ひとりその話を知らなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。