豊作の年に現れる後藤野のオサクダテ
どんな伝承か
岩手県の後藤野では、狐が見せる野の幻をオサクダテと呼ぶ。人の背丈より高い、旗を付けた鉾が二列に立ち並ぶこともあり、狐は人の影を借りてこのように遊ぶと菅江真澄の紀行に見える。報告によれば、新暦三月のある日、夜十一時ごろから、稲荷の小さな祠のある野中の十字路で始まり、まず提灯の行列、次に農夫が米俵を担いで運ぶ姿、最後には弓矢の合戦となって、たいてい勝負がつかないうちに夜が明けるという。豊作の年には必ず見られ、凶作の年には現れないと言い伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。