狼を神の国
どんな伝承か
秩父地域では狼が絶対的な恐怖の対象となっていた。狼は実用的な価値がなく人間や家畜を襲う害獣だが、この地域では「御犬族」と敬称で呼ばれ、大口真神の名で畏怖されていた。ほぼすべての家軒に狼の顔を描いたお札が貼られており、その張り方は狼の強大な支配力と地域民の深い恐怖を象徴していた。狼は単なる害獣ではなく、この地の人々にとって絶対的な力を持つ存在として扱われていたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。