三度崩れて片側になった弘法井戸
どんな伝承か
西牟婁郡中辺路町の井戸の谷は、いまでこそ人家が一軒きりだが、昔は百姓家が二軒あり、多くの人が弘法井戸の水を汲みに来た。もとは浅い井戸で、手杓で水をすくっていたという。百年ほど前、三尾村の弥助という石屋を雇って造り直したところ、弥助が石垣を積むそばから三度も崩れた。腑に落ちない弥助が池田の大師堂で伺いを立てると、表を開けて大勢の人にも汲ませよとのお告げがあった。そこで今のような片側井戸に改めたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。