大昔は一円の湖水であった遠野郷
どんな伝承か
遠野郷は今の陸中上閉伊郡の西の半分で、山々に取り囲まれた平地である。新町村では遠野、七淵、附馬牛、松崎、青笹、上郷、下郷、鶴沢、宮守、達曽部の一町十カ村に分かれ、近代は西閉伊郡とも、中古には遠野保とも呼んだ。花巻の停車場で汽車を下り、北上川を渡って猿ヶ石川の渓を伝い、東へ十三里入ると遠野の町に至る。伝えて言う、遠野郷の地は大昔すべて一円の湖水であったが、その水が猿ヶ石川となって人界に流れ出したことから、自然にこのような邑落をなしたのだと。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。