会津磐梯山塔沢温泉の少年を襲う怪獣
どんな伝承か
内閣文庫にある見聞録『雑事記』の巻四十に、天明二年、会津磐梯山の麓の塔沢の温泉で、滞在していた少年が幾人も取られたという記事がある。人びとはこの山に怪獣がいると知り、ある武勇の者が出向いてこれを打ち留めたという。その獣を描いた図が同書に載るが、尾があって水掻きを備え、鼻は天狗のように長く、二本足で立って歩くと記されている。柳田国男は狒々ともつかず何物とも解しがたいとし、江戸期の随筆に見えるこの類の怪獣記事は伝承の際の誇張が多く、絵図の添う話ほどかえって信用しがたい種が多いと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。