愛宕山の堂前で出会う赤い顔
どんな伝承か
山口から柏崎へ行くには愛宕山の裾を回る。田圃に続く松林で、柏崎の人家が見える辺りから雑木の林になる。愛宕山の頂には小さな祠があり、参詣の路は林の中にある。登り口に鳥居が立ち、二三十本の杉の古木があって、傍らにもう一つがらんとした堂がある。堂の前には山神と刻んだ石塔が立ち、昔から山の神が出ると言い伝える所である。和野の何某という若者が夕方この堂のあたりを通ると、愛宕山の上から丈の高い人が降りてきた。林越しに顔を目がけて歩み寄ると、道の角ではたと行き会った。相手は大いに驚き、その顔は非常に赤く、眼は輝いていた。山の神と知って後も見ずに柏崎へ走り着いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。