四十八坂で妻に化けた狐
どんな伝承か
船越の漁夫某がある日仲間と吉利吉里から帰り、夜更けに四十八坂のあたりを通ると、小川のある所で一人の女に出会った。見れば自分の妻である。しかしこんな夜中に一人で来るはずはないので必定化物と思い定め、いきなり魚切庖丁で後ろから刺し通したところ、悲しい声を立てて死んだ。しばらく正体を現さないのでさすがに気に懸かり、後を連れの者に頼んで家に走り帰ると、妻は何事もなく待っていた。今恐ろしい夢を見た、あまり帰りが遅いので夢に途中まで迎えに出たところ、山路で何とも知れぬ者に脅かされ、命を取られると思って目が覚めたという。元の場所へ引き返すと、殺した女は連れの者が見ている間についに一匹の狐になっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。