百五六十歳と答えた実相寺の残夢
どんな伝承か
足利時代の終わり近く、諸国に常陸坊海尊が生きているという話が多かった。会津の実相寺の二十三世、桃林契悟禅師は号を残夢といい、自ら秋風道士とも称した老僧で、その一人であった。奇行が多く、好んで源平の合戦などの旧事を語ることが、あたかも自身がその場に居合わせた者のようであった。石城郡に住む無々という老翁が残夢を訪ねて来て、二人で頻りに曽我の夜討の話をしていたこともある。年を尋ねると百五六十と答え、強いて問い詰めると却って忘れたと言って答えなかった。ならば常陸坊海尊だろうと噂されたという。天正四年三月、偈を留めて円寂し、墓もその寺にある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。