毎年還る板沢家の嫁女
どんな伝承か
釜石地方の名家板沢氏には、風の日に神隠しの女が還るという言い伝えに近い旧伝があった。毎年日を定めて、昔行き隠れた女性が、何人の眼にも触れることなしに還って来るように信じられていた。盥に水を入れて表の口に出し、新しい草履を揃えて置くと、いつの間にかその草履も板縁も濡れているなどと噂された。この家のは娘ではなく、近く迎えた嫁女であった。精密な記憶が家に伝わっており、いつの頃からか不滅院量外保寿大姉という戒名を付けて祀っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。