公道の真ん中に残された本照寺の楠
どんな伝承か
谷町の本照寺の境内には、四〇〇年ほど前に死者を葬った目印として植えられたと伝わる楠があった。昭和二〇年三月の大空襲で隣家に爆弾が落ち周囲は焼き払われたが、楠と寺だけは焼け残る。戦後の区画整理で寺は立ち退き、二四、五年ごろ楠も伐ろうとしたところ、木から落ちる者が出、原因不明の熱で数人が死に、怪我人も出たため誰も手を出さなくなった。こうして楠は公道の真ん中に残された。のちに地下鉄と下水道の工事で根を断たれて枯れ、脇に植えた二代目が育っている。毎年一二月一三日にしめ縄が替えられ参拝は絶えず、白蛇が棲むとも噂されてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。