無礼討ちにされた山伏と絶えた広田家
どんな伝承か
只野真葛の『真葛がはら』に載る仙台の話である。城下に住む番士広田甚八は昼から酒を過ごす男で、ある日、門前で法螺貝を吹く山伏を追い立て、逃げる相手を追って、肥溜に落ちたところを命乞いもきかず斬り殺した。無礼討ちの届けは咎めなしとなったが、甚八は酒量が増して乱心し、屋敷牢に入れられて半年後に死んだ。家を継いだ甚五郎が江戸詰めを命じられ、その祝宴の最中に山伏が訪れ、まだ広田家は亡びぬかと言い残して消えた。江戸へ移った甚五郎はほどなく失明して病死し、二人の子も相次いで亡くなり、妻も再嫁先で事故死した。山伏の祟りだと噂されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。