墓地に帰りたいと泣いたしゃれこうべ
どんな伝承か
天保のはじめ、百四十余年前のこと、秋田の殿さまの沙汰があって寺が移転することになり、墓地も掘り起こされて白骨も移された。寺の跡は佐竹藩の練兵場に変わり、川久保藤左衛門がその係となった。ある月の晩、藤左衛門は泣き声がするので練兵場を見回ったが影一つない。番小屋へ戻ろうとして足につまずいたものを拾うと、しゃれこうべであった。番小屋へ持ち帰って水を浴びせてやると、しゃれこうべは礼を述べ、自分は久保田家の娘だが、寺の移転の折に恋しい男の家へ幽霊になって出かけていたので取り残された、久保田家の墓地へ帰りたくて泣いていたと語った。藤左衛門が翌日それを移転先の墓地に埋めると、泣き声は絶えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。