聯隊の井戸に沈められた芸者
どんな伝承か
仙台にあった第二師団歩兵第四聯隊の井戸から女の幽霊が出るとうわさが立った。昭和八、九年の頃である。聯隊は続々と満州へ出発していった。ある中隊がつつじが岡の営門を出て二十人町の坂にかかり、仙台停車場へ向かうと、そのしんがりに芸者風の女がついていた。沿道の住民が、あれはミサコではないかと声をかけると、その芸者は前を行く伍長の背嚢にひょいとおぶさって消えた。この有様が仙台の話題となり、上野停車場から戻された伍長は、芸者ミサ奴を殺して聯隊内の井戸に投げ入れたと自白した。井戸は埋められた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。