枝を折った者が消えた宮跡の老杉
どんな伝承か
平城宮跡にはかつて一本の老杉があり、里の人々は神木として敬い、灯明を絶やさなかった。ある年の春、村のいたずら者がこの杉によじ登って枝を折ったところ、そのまま行方が知れなくなった。里人は驚いてあちこち探し回ったが見つからず、いたずら者の両親は昼も夜も神木に向かって罪を詫び続けた。三年が過ぎたある夜、その家に神が現れて罪を許すと告げて消えると、いなくなっていた息子が家の中にきちんと座っていたという。その杉は今は残っていない。
原典より
里人は神木とあがめて絶えず灯明をあげていた。—— 奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。