灰に残った獺の足跡と亡妻
どんな伝承か
荘内可成談に、郷の妖として次の話が載る。天明年中、鶴岡の上肴町の下、七日町の橋脇に髪結いを業とする者がいたが、その妻が亡くなって七日という夜から毎晩来るようになった。祈禱などをしたがきき目がない。これを聞いたある人が語ったところによれば、孕んだ獺が死人の沐浴した湯を飲めば必ずその怪異が現れるので、砂か灰かをまいて足跡を見ればよいという。そこで灰を家の中にまいておくと、その夜も現れ、翌朝見ると確かに獺の足跡があって、その後は来なくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。